2015年より写真活動を始めました。
東京の都市風景や建築物、自然風景などを中心に撮影しています。
2021SWPA | 2018IPA | EF on 2019 NatGeo Travel Photo Contest | 東京カメラ部写真展入選 など
東京カメラ部コンテスト入賞者のYukihito Onoさんは、東京の都市風景や建築物、自然風景などを中心に撮影している。手持ちの機種ではRAW形式での記録ができないことや、センサーサイズの面から、スマートフォンでの撮影は記録用と割り切ることが多かったというが、「arrows NX9 F-52A」に備わっている、「Photoshop Expressモード」をはじめとしたAdobe Photoshop Expressアプリとの連携機能に強く興味を持ち、arrows NX9 F-52Aで都市夜景を中心とした撮影に臨んだ。arrows NX9 F-52Aは、連携機能に加え、超広角、広角、深度の3種の機能を有した「トリプルカメラ」を搭載するなど、写真撮影を楽しむことに長けた注目の新機種だ。今回は、あえてスマートフォンでは特に綺麗に撮りづらいとされる夜景を中心に撮影に出向く。
──arrows NX9 F-52Aはカメラ機能が充実しています。使用前はどのような印象を持ったでしょう。
これまでスマートフォンは、ロケハンの記録用やInstagramのストーリーズ用など、記録として残すという使い方しかしてきませんでした。しかし、スマートフォンがAdobe Photoshop Expressアプリと連携するというのは前例がなかったと思うので、それがどのような体験をもたらしてくれるのかというところに興味がありました。RAW形式で記録できないにしても、手軽に撮られた写真がどれだけ美しい写真になるのだろうと。
──目玉機能は「Photoshop Expressモード」で、撮影後すぐに自動補正が適用され、その効果を確認できる点にあると思います。自動補正の精度や方向性はいかがでしたか。
Adobe Photoshop Expressアプリへの連携、自動補正の適用は快適でした。そして、普段の一眼レフでの撮影の際のポストプロダクションと同じく、ハイライトを抑え、シャドウを持ち上げるという基本的な補正を、やりすぎない程度に行ってくれます。とても適切な補正だと感じました。arrows NX9 F-52Aのカメラ機能との連携が最適化されているのか、本機で撮影された綺麗な写真をAdobe Photoshop Expressアプリが自然に補正してくれていると感じました。
──約800万画素の超広角カメラ、約4850万画素のメイン広角カメラ、約500万画素の深度カメラのトリプルカメラ仕様ですが、今回はどちらのカメラ設定をお使いになりましたか?
「Photoshop Expressモード」はメインカメラと連動するので、今回はメインカメラを中心に使用しました。メインカメラも画角79°の広角のため、風景の撮影にも十分使いやすいと感じましたね。スマートフォンでの撮影は手持ち撮影となりますから、手ブレ補正が重要となります。メインカメラの高画素モードでは手ブレ補正が効かなくなるため、今回は高画素モードを使用せずに4:3比率の4000×3000ピクセルで撮影しています。
──それでは作品を見ながら解説をお伺いしていきます。ほとんどの作品が3枚同一カット、補正違いであります。これはどのような意図でしょう。
1枚目はオリジナル、2枚目は「Photoshop Expressモード」の自動補正、3枚目はAdobe Photoshop Expressアプリを使いさらに調整を加えたものです。
オリジナル自体も充分綺麗ですが、都市夜景の撮影でカメラと比較するとスマートフォンでの撮影では、どうしてもシャドウが暗く落ち込んでしまい、ハイライトは白飛び気味になってしまいます。
「Photoshop Expressモード」の自動補正が適用されると、黒潰れ・白飛びが改善されました。わたしが普段行うRAW現像の後のデータに近い結果になっています。場面にもよるのですが、やりすぎにならない、とてもよい状態で補正を止めてくれる感覚がありますね。ハイライトを抑えすぎると不自然になるのですが、そこまではならない絶妙な補正ではないでしょうか。
さらにAdobe Photoshop Expressアプリを使い補正しています。とはいっても、ホワイトバランス程度です。この写真は都市夜景をクールに見せたかったので、ホワイトバランスを調整し青みを強めました。ホワイトバランスは撮影段階でも調整できます。
──高感度ノイズの出方などはいかがでしたか?
ほぼ気になりませんでした。一眼で撮るときはISO感度をもっとも低い状態にして長秒露光をするので三脚が必須となります。arrows NX9 F-52Aは手持ち撮影しかできませんから、おそらくかなりの高感度だったはず。しかし、ノイズは拡大しても目立たない印象ですし、ノイズ除去がかかっているとしても、シャープさが失われている印象もありませんでした。
──シャッタースピードは表示されませんが、体感でどのくらいだったと思いますか?
おそらく1/50秒くらいじゃないでしょうか。画面をタップして撮影をするため手ブレを危惧しましたが、手ブレ補正が効いているのか大丈夫でした。そこが驚きでしたね。
東京駅を撮影したシリーズは、駅舎のレトロな雰囲気と周囲の都会的なクールさの両方を表現することをテーマにして臨みました。このような建造物を撮影するときは、グリッド表示ができることがとてもありがたかったです。今回、駅舎以外はクールに見えるようなホワイトバランス調整を行いましたが、これはテーマ性や好みの問題だと思います。オリジナルの画像データのクオリティーが高いので、この作業を除けば、ほぼ「Photoshop Expressモード」の自動補正のみで十分に納得のいくレベルになると感じました。
東京駅付近でイルミネーションのある街並みを撮影しました。ガラスに人が写り込んでいる構図。オリジナルはイルミネーションにしか目がいかなかったのですが、自動補正後はシャドウが持ち上がり、歩道を歩く人、車の存在など、写真の中にさまざまな気付きがあっておもしろかったです。デジタルカメラをバッグから出し設定するのにはやや時間がかかりますが、スマートフォンであればポケットから取り出すだけ。普段は撮らないような場面を気軽に残せるのはいいですよね。またメインカメラはかなり広角なので、並木道などを撮るのに向くと感じました。
──都市夜景とリフレクションです。
街灯やビルの窓くらいしか光源がない暗い場面でした。自動補正がかかりシャドウが持ち上がると、水面のリフレクションが美しく写っていたことがわかりました。一眼で撮りPCで現像する場合と異なりその場で補正したものが見られるのはいいですね。これも手動補正でホワイトバランスを調整しました。
──がらりと雰囲気が変わり、温泉街での写真です。
山形の銀山温泉です。東京よりも暗いので、シャドウがどこまで持ち上がるか気になるところでした。体感の明るさは写真で見るよりも遙かに暗いです。しかし、自動補正でシャドウが期待通りに持ち上がりました。ホワイトバランス調整は好み。暖かみを出したければ2枚目でも十分ではないでしょうか。
──補正後、ノイズは明らかに減っているように感じます。
特に手動でのノイズ処理は行っていません。ですから、自動補正のノイズ除去が優秀なのだと思います。一眼で撮影するのであれば、長秒露光で降っている雪は写らないと思います。シャッタースピードの速い撮影だからこその雪の表現かもしれません。吹雪に近い降り方でしたが、もっとしんしんと降る雪だったら、また一味違う美しさがあったかもしれません。
コンセプトが大正時代というレトロな温泉街ですので、それが感じられるような仕上がりを目指しました。奥に温泉街があり、そこだけが明るい状況で、オリジナルでは奥の建物は綺麗に映っているものの木々が少し見えづらくなっています。シャドウが持ち上がることで木々とそれに積もる雪まで見ることができますし、建物のディテールも更に判別できるようになりました。
──再び都市夜景です。
道を照らす照明が目に留まりました。自動補正がかかりシャドウが持ち上がっても、光が当たっているという点は損なわれず、同時にハイライトとシャドウが補正されたことで写真全体が煌びやかになっています。
同じ場所で撮影した別カットの自動補正後です。このような都市夜景とスナップの中間のような撮影に、arrows NX9 F-52Aはとても向くという印象です。一眼では景色を美しく撮ることを重視するため、このシーンでも長秒露光をし、人をブラしてしまうと思いますが、スマートフォンならば人を止めて撮ることになり、自ずと風景の中に人がいる写真になります。この1枚も、たたずむ人が印象的。風景とスナップの中間を楽しむことができるなと感じました。
──続いては、夜景+リフレクションです。
自動補正後は、ライトアップされた橋の白飛びが抑えられており、オリジナルよりも暗くなっているものの、写真全体の中ではクッキリと見えるようになりました。撮影したのは快晴だった日の日没。青みがかった雲のない空がとても美しく、自動補正後にその狙いがしっかりと出たと思います。普段やっている現像作業を自動補正が全てやってくれた感覚です。ホワイトバランスは撮影の時点で調整しており、自動補正だけで完成形となりました。
撮影現場は相当暗くて、街頭の光と奥の横浜みなとみらいのビル群が明るいだけ。1枚目のままだと奥の明るいところにしか目が行かないですが、自動補正すると街頭の暖かみ、石柱が奥に並んでいるラインなどがしっかり表現されるようになりました。どんなに暗くても撮影時は構図にこだわります。シャドウがきれいに持ち上がることで、構図に意味を持たすことができ、作品として成立するようになると思います。
この1枚も同様で、シャドウが持ち上がることで鎖が手前から奥へと伸びているのがわかります。通常は船をもっと中心に配置するかもしれません。しかし、鎖を使って視線の導入をしているということが、自動補正後に意味を持ってきています。arrows NX9 F-52Aならではの変わった構図の1枚かもしれません。
ハイライト補正の効果がとても表れている1枚です。オリジナルは白飛びを起こしていますが、自動補正はそれが抑えられ、オブジェのピンクの色味が美しく表現されています。雲のディテールも自動補正後はよくわかります。
──そして、逆光写真も瞬時に補正されます。
逆光写真では明暗差が激しくなり、ハイライトかシャドウのどちらかの露出を優先した撮影となります。
今回はハイライト部に露出を合わせて撮影しているので、シャドウ部が黒つぶれてしまい被写体のディテールも失われているように見えます。
しかし、「Photoshop Expressモード」自動補正ではハイライトとシャドウを両立する事が可能でした。ハイライト部の階調を失うことなく、シャドウ部を持ち上げ被写体のディテールを引き出しクリアに表現。オリジナルの画像データにしっかり情報が残っていたので、ハイライト部とシャドウ部の両方を美しく表現することができました。
奥の空のハイライト部分をタップし、そこに露出を合わせて撮影しました。自動補正によりビルのシャドウ部分が持ち上がり、都会の雰囲気をより効果的に表現することができた1枚です。
──最後に自然風景も。
太陽部分をタップし、そこに露出を合わせて撮影しました。自動補正により太陽部分のハイライトを抑えつつも菜の花畑のシャドウ部分が持ち上がり、菜の花の存在感を強調することができました。
逆光環境では、フレーム内のハイライトが一番強いところに露出を合わせて撮影すると、「Photoshop Expressモード」による自動補正の効果がより鮮明に出てくると感じました。
──arrows NX9 F-52Aの操作面、持ち運んでみての使い勝手はいかがでしょう。
雪の中での撮影もありましたが、arrows NX9 F-52Aはハンドソープや食器用洗剤(※1)を付けて丸洗いできるくらいの防水性なので、濡れることを気にせずにサッと取り出せるのは心強いです。アルコール除菌もできるので安心ですね(※2)。また、「Photoshop Expressモード」で撮影をすると、撮影直後にアニメーションで自動補正適用後の画像が表示されたり、簡単に画面上のアイコンから、Adobe Photoshop Expressアプリを起動することができるのも便利でした。
──arrows NX9 F-52Aの総評をお願いいたします。
ハイライトとシャドウの自動補正も優秀ですし、メインカメラも広角で広く切り取れるので、夜間や室内の記念写真であっても、なぜそこで撮ったのかがわかる1枚になります。記念撮影的に気軽に撮影をしても、作品に近い状態で残すことができると思います。東京駅の写真などは、スマートフォンの画面サイズであれば、一眼で撮ったものと違いがわからないかもしれません。場面によっては、スマートフォンにはハードルの高い夜景も、arrows NX9 F-52Aで十分。特にスマートフォンでの鑑賞を念頭に入れた場合は立派な作品撮りカメラになると思います。
──どうもありがとうございました。